医工学コース
准教授  橋本 時忠 (HASHIMOTO Tokitada)
E-mail:hasimoto [at] cc.saga-u.ac.jp (メールアドレスは [at] を@に変更してください)



1998東北大学工学部機械航空工学科卒業
2000東北大学工学研究科航空宇宙工学専攻 修士課程修了
2003東北大学工学研究科航空宇宙工学専攻 博士課程修了
2004独立行政法人宇宙航空研究開発機構 プロジェクト研究員
2007東北大学先進医工学研究機構 科学技術振興研究員
2008東北大学大学院医学系研究科 助教
2008佐賀大学理工学部機械システム工学科 講師
2010佐賀大学大学院工学系研究科先端融合工学講座 講師
2012佐賀大学大学院工学系研究科先端融合工学講座 准教授

専門分野:流体工学
所属学会:日本生体医工学会,可視化情報学会,日本機械学会,国際衝撃波学会,日本航空宇宙学会
受賞歴 :平成26年度衝撃波シンポジウムBest Presentation Award
(衝撃波管駆動の粉体注射器の特性)

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集束膨張波を利用した治療法

本研究は,薬物を利用せず,外科手術を必要としない方法による治療法を目指しています.例えば,体の中に出来てしまった結石を除去するときには「圧力を加えることが出来る波」を利用します.この波は衝撃波と呼ばれ,数100MPa以上の高圧を簡単に作り出せることができる上に,数マイクロ秒オーダーの比較的短時間で減衰するため痛みを感じることなく結石を破壊させることができます.しかも,外科的な手術痕も残りませんし,回復も早くなります.

本研究では衝撃波とは逆に「圧力を減らすことが出来る波」である膨張波を使った治療法の研究を行っています.この膨張波はユニークで体内に作用させると引張の力を誘起する性質を持ちます.従って,その膨張波をコントロールして,直接生体に作用させることができれば様々な治療法,利用法への応用が期待できると考えています.特に,循環器に関する患者数は今後大きく増加することが予想されています.薬物に頼りすぎず,外科的な手術をせずに病気が治療できる方法の確立は社会的に大きな意義があるでしょう.

ウォータージェットの医療応用

本研究では液体の力を利用した医療への応用に関する研究を行っています.

一つ目の応用例として,医療用のパルスウォータージェットメスが挙げられます.医療機器の技術向上によって外科的手術が困難な症例に適用できるようになりましたが,未だに熟練技術に頼らざるを得ない局面が多数存在しています.たとえば脳組織は出来るだけ細い血管を残存させることがキーポイントとなっています.そこで注目されたのがウォータージェットメスの導入です.これは生体組織と血管の弾性の違いを利用します.この方法により血管を温存して患部のみを切離することができるようになると考えられます.

二つ目の応用例として,高速液体ジェットを利用したゲル状の薬剤を体内に輸送するシステムに関する研究です.最終的な完成形として片手で納まる大きさを想定しており,まさに我が国が得意としている分野です.この方法は20µm以下のゲル微粒子を体内へ輸送する革新的な方法です.

粉体粒子注射の基礎研究

直径0.5mm以下の極微細な超音速噴流を利用して数mmから数10mm程度の薬剤を体内へ輸送する方法を研究しています.本研究は超音速噴流を瞬間的に発生させることができる「衝撃波管」を応用しています.この衝撃波管は航空宇宙分野などで良く利用されている装置で80メートル以上の装置も存在しますが,ここではその装置を手のひらサイズまで小さくして使用することを想定しています.この注射方法は針を使わないので,注射が苦手な方には革新的な技術になると思います.さらに現在一般的に使用されている注射器(シリンジ)につきまとう針に関する諸問題(衛生上の問題から使い捨てにされること,廃棄時の針の処理方法等)の解決が期待されます.